第2回
電話は東京の真理子お嬢様からだった。
「何をしていたの、遅いじゃないの!」
叱咤の声が飛び込んできた。
「申し訳ありません。ヤマトに運動をさせていたものですから……」
「家の掃除なんかはできているの」
「はい、済んでおります。いつおいで頂いてもよろしいですよ」
主人たちが来るとの連絡があってから、すぐに掃除を済ませておいた。
そうするのも稔の大事な仕事のひとつだった。
「それならいいけど。香織さん一人だけ早く発つことになったの」
予定では真理子と婚約者の前原潔。
そして、その妹の香織の三人は明後日にやって来ることになっていた。
しかし、その中の香織だけが今日着くというのだ。
真理子たちが到着するまでの間、一人で辺の観光地を見てまわる希望らしい。
「空港到着が15時35分の便だから、迎えにいってちょうだい」
「かしこまりました」
電話を切り、稔はライフルを自分の部屋のいつもの場所にかけた。
「いよいよ来るか……」
小声で口にしながら、稔は地下室に下りた。
地下室の奥には、鉄扉を錠で閉ざした一室がある。
その扉を開けて、稔は、分厚いマットを運び込んだ。
コンクリートで囲まれたその小部屋は、マットで敷きつめられた。
さらに毛布も何枚か運び込んだ。
稔はマットを踏んでその弾力を足の裏に楽しみながら、上を見渡した。
天井に走る数本のパイプにはロープを結びつけ、その端を垂らしてある。
壁の方々に打ち込まれた幾つかの鉄環にもロープを結びつけてある。
「歓迎の準備はすっかりでき上がっているぞ!」
稔は弾みつけて跳び上がりながら、昂ぶりを大声に吐き出した。
香織とは初対面だったが、ひと目でそれとわかった。
それほどゲートから出てくる香織の姿は際立っていた。
帽子もレースの服も手袋も、ハイヒールも車付きの旅行鞄もすべて白で
統一している。
まるで白無垢の花嫁姿というところだな。
稔は、いかにもそのお嬢様という姿を舐めまわしながら思った。
もっとも今夜おれの花嫁になるわけだが……。
-つづく-
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