第54回
翌日、和章はいつに変わらず昼前に起きた。
万年床から起きあがり、大きく伸びをする。
隣に引っ越してきた美人のことを思い出していた。
窓を開け、隣をのぞきこむと、案の定、カーテンがひいてある。
仕事にいっているのだろう。
憧れの美人が水商売ではなくて、ホッとしていた。
一日中、大学へも行かずボウッとすごした和章は、夕方から、そわそわした。
千枝の帰宅を今か今かと待った。
千枝が帰ったからといって、なにかをするわけでもないのだが……。
隣室に美人がいると思うだけで、和章は幸せだった。
昨晩見た、千枝の眩しいヌードが、何度となく和章の脳裏に浮かんだ。
形のいい乳房といい、むっちりとしたヒップといい、千枝の裸身のすべてが
素晴らしい。
あんないい女を抱いて、ヒイヒイよがらせることのできる中年男が、たまらな
くうらやましく思える。
八時近くになって、千枝が帰ってきた。
廊下を歩くヒールの音が部屋の前を通って、隣の扉が閉まると、和章は待って
ましたとばかりに薄い壁に耳を押しつけた。
衣ずれの音も逃すまいと、全神経を隣室に集中させる。
きっとワンピースを脱いで、下着姿になっているはずだ。
今日はどんな形の、何色のパンティをはいているのだろう。
昨日もらった真っ赤なパンティは大事にしまってある。
隣室の扉が開く。
きしんだ音がした。
遠慮がちに自室の扉をノックされ、和章の心臓が鳴った。
和章は髪を撫でつけ、扉を開いた。
「こんばんは」
「こ、こんばんは」
千枝はオレンジ色のタンクトップにベージュの超ミニスカートを着けていた。
ストッキングなしの生脚は、太腿の付け根ギリギリまで露出している。
ちょっとでも、かがめば、パンティが見えてしまうだろう。
それに肩が露出したタンクトップも、季節にはまだ早いだけに、悩ましい。
「あの、コインランドリーは、近くにあるのかしら……」
大きな瞳でじっと見つめられ、和章はドキドキする。
「ちょっと歩くけどありますよ。けど、ちょっとわかりにくいところにある
から、ぼくが案内しますよ」
「いいんですの?」
「どうせ、暇を持て余していたんです」
和章は千枝と外を歩けるだけで、幸せだった。
路地を出ると、道行く人たちの視線を浴びた。
それはセクシーな格好の千枝に対してだったが、そのとなりにいるだけで和章
は、鼻高々だった。
すれ違う男たちの目の保養とばかりに千枝の脚線美を見ていた。
コインランドリーまでの5分間、和章にとっては今までの人生で最高の時だった
タバコ屋の角を右に曲がった小さな路地にコインランドリーがあった。
コインシャワーもついている。
千枝は礼を言うと、洗濯ものをランドリーに入れた。
量はわずかで、そのほどんどが華やかな色彩のランジェリーだった。
和章はまともに見られなくて視線をそらしてしまう。
なんだか立ち去りがたく、椅子に腰をおろした。
-つづく-
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