第34回
潤子の表情には恐怖の感情すらも残っていないように見える。
身体も心なしか衰弱しているようだ。
潤子は、自分が何故こんなところにいるのか。何故こんな目にあうのか。
今朝からなにも食べていない。いや、食べさせてもらっていないのだ。
ただ少しの水を飲んだだけだった。それ以上は、口にしていない。
身体は疲れきっている。恐怖心さえも麻痺してしまっていた。
惨めに手錠で繋がれ、火照った頬に羞恥の涙を流すだけだった。
(誰かたすけて……)
しかし、舞台の下では、欲望に満ちた観客たちは、穴のあくほどに潤子を肉体
を見つめているのだった。
「やめろー! 見るなー!!」
ガラスの前で叫ぶ新見。
そんな声が聞こえるわけもなく、まして、潤子に届くはずもなかった。
潤子もまた、2階から夫が見ているなんて考える余地もなかった。
観客のなかのカップルは、男の奮い立つ男塊をとりだしていた。
それを握りしめる指先は、かすかに震えている。
男も女のスカートを捲り上げ、手をのばすと太腿の奥をまさぐりながら息を
荒げていた。
ローザがまた、鞭を床に向かって打ちつけた。
そして、奈菜が舞台に突き飛ばされて登場した。もちろん全裸だ。
会場はわれんばかりの歓喜の声が交差する。
舞台を見つめた奈菜は、悲しげなやつれた表情で立ち尽くした。
母親が哀れに肉体を開いて張りつけられている。
そんな姿を見つめると、悲鳴をあげて駈け寄っていった。
「ママー……。ひどい……」
しかし、母親に触れることもできず、すぐにベッドに突き飛ばされてしまう。
ローザはすばやく、両手両脚をベッドにくくりつけた。
奈菜は恥ずかしげもなく、両脚を拡げて仰向けにされてしまった。
いちばん隠しておきたい股間までもさらけだした姿で……。
淡い繊毛に飾られたそこが、大画面に大写しになった。
その光景をローザは満足そうに見つめていた。
奈菜もまた、自分が何故こんな目にあうのか考えていた。
両手脚を縛られ、泣きながら唇を噛みしめるばかりだった……。
-つづく-
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